IOCの貪欲も最終章に?

「コンテンツとしてのオリンピック」を売るIOC


2022年の冬季オリンピックは,オスロ,ストックホルム,ミュンヘン,クラクフ(ポーランド),リヴィヴ(ウクライナ)が一度は名を挙げたものの,開催地市民の反対や財政難,政情不安などを理由に招致レースから離脱するという騒動の末,北京に決まった。

オリンピック・ブランドを高く売り込もうとするIOC。商売はどんどんエスカレートして,開催費は膨らんだ。しかし,開催費用の多くは開催都市と国が負担してくれる。そして,想像できないほど高騰している放送権料はIOCに入る。

放送権料は採算がとれる?

日本のコンソーシアム(放送権を買うための報道機関のグループ)が支払う放送権料は,2014年ソチ+16年リオデジャネイロの放送権料は計360億円,2018年平昌+20年東京が計660億円だ。この価格にはもちろん,日本の見やすい時間に行われるということがある。(でも,過去の大会であったように,アメリカの見やすい時間に決勝が変更されるというケースも起きるのでしょうね。)こんな価格では,広告料ではまかなえないという心配があるが,有料放送でしか流さないとしてどれだけの収入が得られるだろうか。

日本国民は世界の中でもオリンピックが大好きだと言われる。しかし,インターネットの発達などで選択肢が増えて,誰もが見るテレビ番組がなくなっているのが現状である。別料金を払うのだったらオリンピックは見なくてもいいやと思う人が多く出て,有料放送(ネットも含めて)だけで採算をとるのは難しいだろう。

少し,計算をしてみる。CS・BSの契約者数は現在630万人(NHK BSの約2000万人を除く)。楽観的なシナリオで考えてみる。新規に契約する人もいるので,650万人が5000円ずつ払えば325億円。冬季は400万人が4000円ずつ払えば160億円,合わせて485億円。NHKはオリンピックで特別に課金する方法はないと思われるので計算には加えない。ごく,楽観的に考えても足が出る。悲観的に見れば200~300億円だろうか。

また,NHKは追加徴収せずに,地上波・衛星放送で流すだろうから,その分有料放送の価値は下がる。結局,できるのは地上波の放送を大幅に減らしながらも,地上波のスポンサー料とNHKの受信料から200億円程度,悲観的な予想では400億円程度負担するということだろう。6000億台後半の受信料収入があるNHKからすれば,はした金か?

別な計算をしてみよう。夏・冬の大会1セットを見るために日本が支払うのが660億円。これを人口で割ると一人600円ほどの負担。3人家族では1800円の負担だ。これをIOCに払う。全ての国民が熱心に見るのなら,映画の料金などと比べて高いとは言えない。でも,そうではない。64年のバレーボール決勝はほとんどの人もが見ていたが,時代は変わり,好みは細分化している。それにこたえて有料番組も細分化しているのだ。

限界が見えてきた? オリンピック

IOCは現在,開催経費の削減を掲げるようになったが,一方では,アスリート・ファーストを唱えながら,欧米の放送権料のために真夏を開催日程に指定するなど,その貪欲は消えたわけではない。

しかし,今,立候補都市の減少や市民の反対による辞退という形で,その限界が見え始めているのだ。

コメント

人気の投稿

自分の写真
masao
ゲイツ,ジョブズ,さんまと同じ1955年生まれ。 この春から自由人?に。