強制起訴は「強制的な」起訴? 任意起訴なんてない
「任意起訴」なんてない
福島第一原発事故を巡る業務上過失致死傷罪容疑で東京電力の元幹部が強制起訴された裁判の被告人質問が,19日,東京地裁で開かれ,ニュースになっています。
気になる言葉が「強制」起訴。ほとんどの人が誤解している気がします。普通の起訴より「強制」起訴のほうが強制力が強いとか,被告人がより悪いことをしているのだとか。
強制起訴とは何か
裁判には民事裁判と刑事裁判があり,殺人事件などの刑事裁判では検察が被告人を起訴=裁判を起こします。社会の秩序を守るために,まず警察が,それを引き継いで検察が捜査を行い,裁判を起こすのです。被害者が裁判所に訴えるのではありません。
だから,検察が捜査の結果,裁判で罪を問えないと判断した場合は起訴しないことになりますが,そうなれば被害者には不満が出ます。また,検察の常識が社会常識に合わないと批判されることもあります(東京電力はあんな大きな事故を起こしたのに裁判で責任を問われないのはおかしいとか)。
そこで,検察審査会がつくられました。「検察は起訴しないとしているが,適当なのか」を審査するという仕組みです。過程は色々ありますが,最終的に審査会の決定により裁判所が指定した検察官役の指定弁護士が起訴をおこないます。これを「強制起訴」とよんでいます。
普通の起訴でも,被告人は訴えを断るわけにはいきません。任意ではなく強制です。強制起訴は,検察が起訴しないといっても「強制的に」裁判をはじめることなのです。
強制起訴で起こされた裁判はどうなっているか
強制起訴により始められた裁判で,被告人が有罪となることは多くありません。その理由は,検察が,裁判になっても有罪とする十分な証拠などがないと判断したものだからです。当たり前と言えば当たり前ですが。どうしたものでしょうね。
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