高プロで労働生産性が上がる理由は?

「働き方改革」の挫折

「働き方改革」法案のうち,裁量労働制の拡大が今国会では提出されないことになった。もちろん,法案成立が断念されたわけではないし,高度プロフェッショナル制度は取り下げられていないが。

政府がこの法案を提出したのは,経済界からの強い要望があるからだ。経済界は,「生産性を上げるためには是非とも必要だと主張する。

経済団体からもこぞって「遺憾」の声が(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20180302/k00/00m/020/113000c

生産性が上がるという根拠は

しかし,高プロや裁量労働制で生産性が上がりワークライフバランスが向上するという主張の根拠がわからない。能力のある人が「労働時間に縛られずに」働けば生産性が上がるというのだが。

シナリオ1:能力のある人が同じ賃金で短時間のうちに仕事を完了すれば(時間当たりの)労働生産性は上がるが,企業の利益は増えないので経営者がこれを望んでいるとは思えない。また,これを実現するのに法改正は必要ない。

シナリオ2:能力のある人が同じ賃金で長時間働けば生産は増加し,企業の利益は増える。経営者はハッピーだろうが,労働量が増えているので(時間当たりの)労働生産性は上がならない。

* 生産性=生産物/投入された資源
  労働生産性=生み出された付加価値/投入した労働量

しかも,法案では,労働時間は労働者が決められることになっているが,業務量を決めることにはなっていないので,労働者を「働かせ放題」にすることができる。もちろん,これは「生産性が上がる」ことではない。

正社員を解雇しにくい日本だから

経営者の立場でいえば,日本では他国と比べて解雇がしにくい。だから,近年,無期雇用の正社員を減らし,非正規労働者をふやす仕組みを政府に作らせて,労働力を調節しやすいようにしてきた。長時間労働も,労働力が不足するときに雇用を増やすと景気の悪い時に解雇するのが困難なので,人を増やさず残業で対処するということで生まれているといわれる。(この問題についてはその他の社会的・文化的要因も大きいが。)

だから,解雇の規制が変わらずに労働時間規制が厳しくなるのであれば,引き換えに,労働時間に関わらず働かせることのできる制度が欲しいのだと推論できる。「働き方改革」で,労働時間規制と「労働時間によらない働かせ方」が抱き合わせになっている理由として合点がいく。

経営者にとって賃金はコストであり,残業代を切り詰めることができれば利益が増加し,国際競争力が強化されると主張するのだ。(これでは,長期的には競争力が下がると思うが。)

こちらのブログの後半の説明が参考になる。
http://www.financepensionrealestate.work/entry/2018/03/02/012536

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masao
ゲイツ,ジョブズ,さんまと同じ1955年生まれ。 この春から自由人?に。