「モノづくり」にこだわれば,日本に未来はない
先日,12年使ってきた洗濯機が故障し,購入した。当時12万円ほどしたが,ほぼ同様の機能のものが8万円ほどで,ほぼ3割安。近年の家電の値下がりはすごい。我が家のテレビは5・6年前に20万円で買ったが,同様のものが今では半額以下。コンピュータも8年ほど前に買ったものは12万円(Windows XP),1年前のもの(7)が6万円と購入金額が下がっているのに,計算速度は何倍にもなっている。(これがデフレの大きな要因。)
こんな状況であるから,今,家電でもうけるのは難しい。比較的賃金の高い日本の家電産業が,より低賃金の韓国・中国に負けるのは当然。ところが「なんとかしてモノづくりを復活させろ」という議論がある。
確かにサムソンは世界を席巻しているが,ソニーが目指すべきはテレビの生産でサムソンに勝つことではない。それで十分な利益をあげることはできない。現在の世界で一番もうけている会社は「モノ」をつくってはいない。アップルがその典型である。iPhoneは韓国や日本製の部品を使い,中国の労働力で組み立てられているが,利益の多くは「モノ」を作っていないアップルが手にしている。
これからの世界経済で利益をあげ,豊かな社会を維持していこうとするならば,目指すべきは工場で大量生産する「モノづくり」ではなく,アイデアや技術を生み出し売ること(アップルならiPhoneのコンセプト・設計),情報のプラットホームを作り出すこと(iTunes ストア)。工業製品の大量生産にこだわって「復活」したとしても,中国などに対抗できる低賃金の労働者があふれる社会になってしまうだけだ。
高度の職人技,途上国ではできない「モノづくり」を否定しているわけではない。しかし,工場での安価な労働力を生かした大量生産と高度な職人技を使う付加価値の高い生産を混同して「モノづくり」としてマスコミが伝えているので,書いてみました。
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