少数意見を尊重するのが民主主義?

橋下大阪府知事が辞任をした。会見でびっくりしたのが,「独裁」でこそ仕事ができるという言葉。以下はこれに関しての考察。

彼を批判するときに,反対があるのに意見を押し通すのは良くないことで,「民主的」な決定とは「少数意見を尊重すること」であると主張する人がいる。

実は,これは非常に日本的な発想であり,(西欧近代の生み出した)民主主義とは異質なもの。「決定は全員(の空気)が一致して決められるもの」で,はっきりとした対立があるのにものごとを決めてはいけないという日本社会の伝統である。戦後の日本にアメリカ流の民主主義が導入され,これが日本化して生まれたものである。


本来,少数意見の尊重とは,「政策決定に際して,対立する意見は必ずあるのだから,議論を尽してから決定する」ということだと私は認識している。

この考え方で彼を批判すれば,議論を十分におこなわずに「自分は正しく,反対する人は悪である」と決めつけることが「民主主義に反している」ことになる。

ところで,(西欧近代の)民主主義の目的はなにか。これは,「基本的人権を守ること」である。民主主義を正統化する理念として社会契約説がある(実際にこのような契約に基づいて国家権力が成立したというのではなく,こういう考え方で権力が正統化されているということ)。この説明では,政府は「基本的人権を守るため」につくられたとされる。このことは,高校の倫理の教科書にも明記されている。

だから,民主主義においては,「反対意見のあることは決められない」のではなく「基本的人権を侵すことは決められない」のである。

このことに,ほとんどの人が気づいていない。日本化した民主主義は「みんなのための政治」で,空気に基づいて決定がおこなわれる。それを否定する人は「強引にことを決める人は悪い人」になるのである。




コメント

人気の投稿

自分の写真
masao
ゲイツ,ジョブズ,さんまと同じ1955年生まれ。 この春から自由人?に。